不器用ハートにドクターのメス
「び、びっくりして……先生、わ、わたしのこと、嫌ってたんじゃ、ないんですか……っ?」
「んなわけねーだろ。なんで」
「だ、だって……この間、宿直室……」
「……勘違い、してたんだよ」
決まり悪さ最高潮の顔で、神崎は言いにくそうに、小さめの声でつぶやく。
「金曜の夜。街で偶然お前のこと見かけて……そんで、お前の兄貴を、恋人だと思い込んでたから」
「え……と……それって……」
「~お前は察し悪いからもう先に言っとくけど!!」
神崎が若干身を乗り出し、近い距離で、目が合う。
しかめ面のはずなのに、神崎のその表情は、なぜか全く怖くないものだった。
「お前に男がいるって勘違いして、勝手に妬いてたってことだ!」
「……っ!」
「あー……かっこわりい……」
片手で頭を抱える神崎を前に、真由美は右手のひらで、口をおおった。
何かが飛び出てきてしまいそうだと思った。胸の高鳴りを、止められなかった。
信じられないほど嬉しくて、舞い上がってしまいそうで。
そしてなぜかこの瞬間、真由美は初めて、神崎のことを可愛いと思った。
「で、でも、先生……」
けれどすぐ我に返り、胸のときめきを沈めて、真由美は尋ねる。
「……あ?」
「その……先生の言う“ 好き ”は……すぐ、終わっちゃうんでしょう……?」
オトすまでが趣味。付き合ってもすぐダメになる。
オペ看の先輩たちがしていたウワサが、ずっと頭にこびりついていた。