不器用ハートにドクターのメス
自分の好きと先生の好きは、違うのかもしれない。
先生の好きは、今だけの、一時的なものなのかもしれない。
そう思うと、一時的な好きは、もっとずっと、辛いことのような気がした。
真由美の抽象的な問いかけに、神崎は眉を上げる。
どういうことだ?と表情で訴えられ、真由美はおずおずと、口を開く。
「先生は、女の人と続かないって……その、ちょっと、ウワサで聞いて……だから、好きっていうのも、一時的なものなのかなっていうか、その……」
ウワサというのが、故意でなくとも盗み聞きして得てしまったものである上、神崎のことを自分が悪く言ってしまっているようで、真由美は後ろめたく思いながら、言葉をしぼり出す。
「あー……」
その言葉を聞き、神崎は、額に手を当てうつむいた。
苦々しく、息を吐く。言うべきことを探すように、顔を上げては、その顔をゆがめる。
「……たしかに」
神崎のくちびるが、ゆっくりと開かれる。
「たしかに今までは、中途半端なことばっかしてきたと……思う。誰にも本気にならずに、割り切った付き合いしかしてこなかった。きっと、福原が軽蔑するようなこともしてきた。でも……」
ゆがめた顔のまま、神崎は真由美に向き直る。
「……でも、違うんだよ。お前は違う」
悪事を吐露するような、後悔を含んだ切実な声が、真由美の耳に届く。
「お前といると……おかしくなる。今までの自分じゃなくなる。余裕が、なくなっちまう」