不器用ハートにドクターのメス

そして真由美は、大変珍しいことに一人ではなかった。

隣に、入院患者とおぼしき老婦人を従えていたのだ。

その図は一見、まるで悪徳セールス嬢が巧みにお年寄りを騙しにかかって最中であるかのようだが……真由美が着ているのはいかんせん、営業スーツではなく、白いガウンだ。

オペの制服で外に出ることは基本禁止されており、出る際はドクターなら白衣、オペ看はガウンを羽織ることが義務づけられている。

真由美が羽織っているガウンは、まだ新しいものだからか、太陽の光を受け、まばゆいほどに白く光っている。

神崎は足を止め、訝しげに片眉を上げて、その光景を見つめていた。

少し観察していると、会話の主導権をにぎっているのは、どうやら老婦人の方だということに気づく。

身振り手振りつきの婦人の話は止まらず、相づちを打つのに必死な真由美のむすびは、食べ終わるか心配になるほど、ちっとも減っていない。

腑に落ちない様子で、神崎はぐっと、眉をひそめる。

福原真由美という人間には、なぜかいつも違和感がつきまとう。

今だって、不機嫌そうな人相と、懸命に相づちをうつ行動が、まったく合っていない。

何日も前からどんな人物なのか推し量ろうとしているのにも関わらず、人物像の焦点が一向に合わない。

神崎は表情を硬くしながら、真由美の隣の老婦人に、注目を移す。

短めの白髪頭で、目尻が垂れた、朗らかな印象の老婦人だ。

全く似ていないが、福原がわざわざ関わりを持っているということは、親戚か何かだろうか。

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