不器用ハートにドクターのメス
しかもあの様子では、唯一頭が上がらない相手だったりするのかもしれない。
それからもしばらく観察を続けていると、ずっと聞き手だった真由美が、老婦人に何かを告げる光景が目に入った。
一礼して、立ち上がる。どうやら、昼休憩の終わりが迫っており、業務に戻らねばならないようだ。
早足で東館に帰って行く様子を、神崎は空になった缶コーヒーを手の内で転がしながら、見届ける。
不明なことは、確かめるに限る、だ。
真由美の姿が見えなくなったところで、神崎は中庭へと足を進めた。
「すみません、少しいいですか」
「……あら!!」
突如自分の元に現れた男前なドクターの姿に、老婦人は両手を口元に当てるという、少女のようなリアクションをとった。
珍しく柔らかい……いや、どことなく胡散臭い微笑みを口元に作り、神崎は、老婦人に問いかける。
「さっきのやつ……福原とは、親戚かなにかですか?」
「え?さっきの……」
老婦人はぱちぱちっと瞬きをしたあと、ああ!とひらめきの声を上げた。
「あの子ね!!いえいえ、親戚ではないですよ」
口に当てていた両手を外し、老婦人はその手をぱたぱたと顔の前で振ってみせると、にこやかに言った。
「病院で知り合ったんです。この間、わたしがこの辺りで転んでしまったことがあって。たまたま近くにいたあの子がね、助けてくれたんですよ」
助けてくれたーー?
再び抱いた強い違和感に、神崎は眉根を寄せる。