不器用ハートにドクターのメス
そんな場所に、恐れと気恥ずかしさを抱いている相手に連れてこられてしまったものだから、真由美は内心、ひどく狼狽していた。
固まっている真由美を尻目に、神崎は勢いよく階段に座り混む。
そして、真由美に隣にくるようにと、アゴでしゃくる動作をした。
真由美はしばらく固まったあと、できるだけ距離を取るように肩幅を縮めながら、神崎のそばに腰を下ろす。
とはいっても、階段の幅は1メートルもない狭さなので、少し傾けば肩先が触れ合ってしまいそうな距離だ。
もう夕飯時と呼べる時間帯に突入していたが、夏は日の入りが遅いため、辺りには、まだ明るさが残っていた。
若干の赤を帯びた光。日中の、厳しい日差しの名残。
けれど、神崎たちが座る部分にはちょうど影ができており、決して不快な暑さは感じられなかった。
「いっつも何時間病院にいるんだ、お前」
真由美に話しかけながら、神崎は自身が羽織る白衣に手を突っ込む。
タバコのソフトケースのほかに、いくつかの物体が指先に当たる。
オペでは一分たりとも狂いがない几帳面さを見せる神崎だが、自身のプライベートとなると、打って変わって大ざっぱなところがある。
なんでもポケットに突っ込んでしまうし、整理整頓は苦手分野。
部屋もすぐに散らかってしまうので、予防策として、極力物を増やさないように心掛けている。
「何時間……?」
少しのタイムラグのあと、視線を落としたまま、真由美がたずねた。