不器用ハートにドクターのメス

普段であれば、他人との会話は、自分の方が退けたり、面倒がる側なのに。

まるで自分が多弁になってしまったように感じ、その感覚がとても新鮮で、神崎は同時に、悔恨の念にかられる。

悔しいという感情を抱くのも、神崎にとっては久しぶりのことだった。


「……今日、最後なんのオペだったんだ」


口内になんとなくすっぱさを感じつつ、神崎は再び問いかける。


「……整形です」

「ああ。山内先生か」

「はい」


神崎が質問するたびに、口からはぽっ、と白い煙が噴出し、それらはまるで漫画の吹き出しのようにも見える。

一方、真由美の口から出る返事は透明で、引き出せる言葉は、相変わらず短い。

そっけない態度に、不愛想な表情。早く帰らせろとでも言いたげなその横顔を、神崎は目をわずかに細めて見つめる。

西日にふちどられた輪郭。伏せられた目から伸びる睫毛が、白い頬に影を落としている。

……もっと、なにか。

神崎は思う。なんでもいい。こいつの口から聞いてみたい。

そう願ったとき、ふと、神崎の脳裏にひらめいたものがあった。


「……あ。お前さ、いっつも持ち歩いてるノートあんだろ?」


真由美は、グレーカバーのノートに、しょっちゅう何かしらの書き込みをしている。

何度も目にしたその光景を、思い出したのだ。

神崎の発言に、真由美ははじめてはっとしたような表情を見せた。

近距離でしばたく目。珍しい表情の変化を目の当たりにし、神崎はほんの少しの間、真由美に見入った。

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