不器用ハートにドクターのメス
と、タバコの灰がえらく伸びていたのに気づき、神崎は急いで、ごちゃまぜのポケットから携帯灰皿を取り出した。
もう一口だけ吸い込んで、先端の火を灰皿に押し付けてもみ消す。
「何書いてんだ?あれ」
灰皿を再びポケットにしまったあと、神崎は真由美に向かって「ん」と手を差し出した。
なんとなくーー今までの対応があまりにそっけなく事務的だったので、なんとなく今回も、なにかしらの短い言葉とともに、あっさりとノートを渡してくれるものだと、神崎は思っていた。
しかし、真由美の反応は違っていた。
ぱっと目をそらすと、顔をうつむけて固まってしまったのだ。
その様子に目を丸くして、神崎は言葉を継ぐ。
「え、見せてくんねーの?」
軽快な、若干のからかいを含んだ言い方をしてみたものの、真由美からの答えはない。
その代わり、さらに顔のうつむき具合がひどくなり、うつむくというよりもはや、背骨から丸まってしまっている。
明らかな拒否の態度に、神崎は数回まばたきをして、少し戸惑った。
そんな、よっぽど見られたらやばいものなのだろうか。
気にはなるが、女から無理やり奪うわけにもいかない。
神崎もしばらく固まったあと、とりあえず、差し出していた手を引っ込めることにする。
ぬるい風が、ほおを撫でる。
タバコも吸い終えてしまったことだし、これ以上ここに留まる理由はなくなってしまった。気まずさだけが、満ちてくる。
これはもう切り上げた方がいいかと、その空気に促されるように、神崎が立ち上がろうとしたときだった。
「……どうぞ」