不器用ハートにドクターのメス
隣から、絞り出したような声が聞こえた。
見てみると、真由美が自分の方に、例のノートを差し出してきたところだった。
「へ……いいのか?」
緊張がゆるんだ声で尋ねると、真由美は黙って、こくりとうなずく。
なんだか無理やり提出させてしまったようだと、若干のきまりの悪さを感じながらも、神崎はノートを受けとり、適当な箇所に指を挟んでページを割り開く。
そして。
「……へえ」
数秒後、神崎は思わず、感嘆の声を漏らしていた。
開かれたページ。そこには、密度高く、みっちりと文字が書き込まれてあった。
内容はすべてオペに関するもので、自分がその日どういうオペについたか、オペでできていなかったこと、これからどうすべきかを事細かに記載してある。
……なんだ。反省ノートだったのか。
あまりにも凶暴な形相で書き綴っている様子を見ていたことと、先ほど渡すのを渋っていた様子から、なにかとんでもないものが書かれているのかと思っていたが……ものすごく普通の内容であったことに、神崎は安堵とともに拍子抜けする。
それにしても、怒られたことを逐一書き留めておくなんて、几帳面で真面目なやつだ。
目を走らせながら、その細やかさに、神崎は圧倒される。
しかもよくよく見てみると、ドクターならではのクセや特徴、それに関して気を付けることなども書き込んである。
“神崎先生”
自分の名前も発見し、神崎は思わずくちびるを結ぶ。
珍しく心臓を反応させながら、先を読み進める。