不器用ハートにドクターのメス
ほおの内側が、くすぐったくなる。なんだかたまらなくなって立ち上がり、真由美はぼすんと、ベッドに体をダイブさせる。
スプリングが揺れて、真由美の体は少し波打つ。
……きっとわたしは、すごく嬉しいんだ。
布団にほおをつけ、息を吐きながら、真由美は思う。
誰からも遠ざけられる自分が、位の違う神崎先生のようなお人に、少し気にかけてもらえて、声をかけてもらえること。
それが、すごく嬉しくて。だから、こんなに、ソワソワしてしまって、勉強しようだなんて、張り切ってしまうのだ。
神崎先生に、認められたい。
先生の……役に立ちたい。
無意識のうちに、ベッドの上で手足をバタバタさせながら、真由美はそんなことを思う。
「……大丈夫?真由美」
その音が、一階まで響いてしまっていたのだろうか。
心配した母親が、ノックのあとドアを開き、そっと部屋の中をのぞいてきた。
真由美母、由実子。49歳。童顔で愛らしい顔をした、真由美に全く似ていない女性である。
つまり、真由美は100パーセント父親似だ。
この母親に似ていれば、真由美にはまだもう少し違う将来があったであろう。
「だ、大丈夫だよ!?」
「……そう?夜更かししないで早めに寝なさいね。真由美いっつも朝早いんだから」
母親が去ってから、真由美はふうっと息をつき、再び脱力して、体をベッドに沈める。
ベッドに転がっていたクマーヌの抱き枕を、胸に寄せ、両手を回して、ぎゅうっと抱きしめる。
湧き上がってくる頑張ろうという意欲と、未だ理解できない胸の高鳴り。
「はあ……」
なんだか今夜は眠れないかもしれないと、真由美は深い、乙女さながらの息をはいた。