不器用ハートにドクターのメス
◇ ◇ ◇


ものすごく緊張するけれど、同じくらい胸が弾む。怖いけれど、ワクワクする。

そんな、ちょっと矛盾したような気持ちを抱えるのは、かつて挑んだピアノの発表会以来じゃないかなと、真由美は思う。

中学二年生に上がったときにやめてしまったけれど、真由美はピアノを弾くことが好きだった。

講師から出される課題曲のほかに、おこづかいを貯めて買った好きな曲の楽譜を、少しずつ練習していた。

そのことを講師に知られ、発表会のときには、クラシックではなくその好きな曲を弾かせてもらえることにもなった。

楽しかったなと思う。勉強が大変で一時離れてしまったけれど、大人になったらまた始めたいなという思いは、どこかにあった。

けれど社会人になってからの方が忙しすぎて、趣味だとか娯楽だとか、そういうものからよけいに離れてしまった気がする。

そういった面での楽しさを忘れてしまっていたなと、真由美は思う。


……そして真由美は、もう一つ重要なことを忘れていた。


神崎が取り仕切る心臓オペにつく日。

なんと、月一で訪れる生理がかぶってしまったのだ。

真由美は、かわいそうなことに、生理痛がかなりひどい方だ。

薬は欠かせないし、学生時代には、しょっちゅう保健室のお世話になった。

もっと言えば、授業中に意識をとばしてしまった経験もある。

成人してからはずいぶんマシになっていたのだが、なぜかこの日に限っては、内側からぶたれつづけるような激痛が、下腹部に走っていた。

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