不器用ハートにドクターのメス

これが終われば。神崎先生のオペなんだから。それだけを励みに、真由美は気持ちを奮い立たせる。

呼吸をひきつらせながらオペ室で待機していると、自動扉をくぐって、神崎がやって来た。

白衣を脱ぎ、オペ着のみになった神崎は、やはり圧巻のオーラをまとっている。

まったく怖じることのない、世界を全て操れそうな堂々たる自信が、そこかしこにみなぎっている。

麻酔医と何か確認し合ってから、神崎はナイロン手袋をはめにかかる。

緊張に眉根を寄せながらその様子を見ていると、神崎がちらりと、真由美に視線を送ってきた。

ーー頑張れよ。

強い眼差しにそう言われた気がして、真由美は大きく息を吸い込む。

肺いっぱいため込んだ空気を吐き出して、思う。

……大丈夫だ。頑張ろう。

勉強はしてきた。それを、全部出そう。同じ間違いはしない。集中する。考える。

できる限り、必死で、先生をサポートしよう。

オペ開始時刻。患者もスタッフも器械も、全てがこの第3オペ室にそろった。

執刀医、助手のドクター、麻酔医、オペ看が患者の周りを囲い、みな同様に息を鎮める。


「タイムアウトお願いします」


オペ室に響いたその一言は、開始の合図だ。

まるでスイッチを入れたように、室内には緊迫した空気が張りつめ、その空気に、神崎がまず、言葉のメスを入れていく。


「ただ今より、大動脈弁狭窄症に対して大動脈弁置換を行う。患者、三河史郎さん、67歳男性。予定時間は5時間、予定出血量1000。お願いします」

「はい」

「メス」

「はい!!」

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