不器用ハートにドクターのメス
高性能のマスクに覆われていても、神崎の真剣でするどい声はくぐもることなく、その場にいる全員にとどく。
おのおのが、動き出す。
頭上には、目がつぶれるんじゃないかと思うほどまばゆい光を放つ、無影灯。
特別なエアフィルターが常時フル稼働し、粉塵や細菌が五千分の一まで除去されている室内。
ピッ、ピッ、と連続して流れるのは、生きている証である脈拍を、機械音に変換したものだ。
1秒に、約1回。聞こえてくるその音の間隔よりも、ずっと速いスピードで、真由美の心臓は打ち鳴っていた。
時間との戦いが始まった中、メスでの皮膚切開、そして全身麻酔が同時に行われる。
「メッチェン!!」
胸骨正中切開後、神崎の手が心膜を切り裂き、心臓が露出する。
初めて見学に入ったときには衝撃的すぎる光景だったが、今ではもう、目を背けることも細めることもせず、しっかりと見つめることができるようになった。
真由美は何も見逃すことがないよう、視神経を精一杯働かす。
恐ろしいスピードで、オペは進んでいく。
神崎先生はやっぱり速いと、焦る気持ちがところどころで湧いてくるものの、真由美はそのたびに、意思で焦燥を押さえつける。
冷静に。集中。いったん焦ってしまうと、本当についていけなくなる。
自分では気づけていないが、真由美は前回神崎のオペについたときより、ずいぶんといい動きができるようになっていた。
前と同じ間違いはしていない。また、決して追いつけているわけではないものの、ただただ神崎に言われるがまま、器械を選んでいるわけじゃない。