不器用ハートにドクターのメス
合っていないことだってあるが、言われる前に自分で考え、自分なりに器具を準備し、神崎に渡そうとすることができている。
オペにおいて執刀医の手技が大切であることは間違いないが、スタッフ間のチームワークがとれていてこそ、安心迅速なオペが完成する。
オペ終了までの時間は、執刀医の速さだけによるものではない。オペ看が器械を渡す、そのスピードやスムーズさも、大いに関係してくるのだ。
人の集中力はもって90分と言うが、開始から3時間、真由美はのめり込むように集中し続けていた。
緊張し、ほかのことに集中していれば、アドレナリンという物質が体内に出て、痛みを感じにくくなるらしい。
そのおかげか、始まる前は目の前がふっと白くなってしまいそうだったにも関わらず、真由美は今、無我夢中でサポートに回ることができている。
だが、アドレナリン効果もそれ以上長くは続かなかった。
開始、3時間半。じわじわと、下腹部の痛みが存在を主張しはじめたかと思うと、あっという間に、真由美は立っていることもつらい状況に陥ってしまった。
口を開けると何かが出てきてしまいそうで、必死にくちびるは閉じるものの、ひどい脂汗に全身を覆われる。
ここまで痛みがひどくなってしまったのは、このところ張り切って、夜遅くまで勉強していたせいもあるのかもしれない。寝不足は健康の大敵である。
とにもかくにも、それから1時間少々。
赤子が生まれるのではという痛みに耐え続け、真由美がオペ終了まで持ちこたえることができたのは、もはや奇跡と呼んでもよい出来事であろう。