不器用ハートにドクターのメス

ごまかすように礼をして、真由美はそそくさと神崎に背を向けると、一人、廊下を歩き出す。

だが、足がうまく前に出ない。膝が折れて、今にも倒れてしまいそうだ。

先生に迷惑をかけるわけにはいかない。だから、もう少し。もう少し。

そんな決死の思いで、なんとか廊下の角まで歩き続ける。

その角を曲がったところで……真由美はとうとう力尽き、ずるずると、壁に沿ってしゃがみこんでしまった。


「う……っ、」


女にしてはかなり渋い声が漏れる。体は寒いのに、息が驚くほど熱い。

ああ、お父さん、お母さん、先立つ不孝をお許しください……気が遠くなっていく感覚に、そんなことを思っていると、自分に向かってバタバタと、せわしなくせまってくる音が聞こえてきた。

かろうじて残っている思考力で、真由美は思う。

足音。それから……白衣の、はためく音だ。神崎先生のーー


「〜福原!!」


必死の形相で現れたのは、その通り、神崎だった。

神崎は勢いよくしゃがみ、真由美の肩に手をかけると、崩れかけているその体を起こす。


「どうした!?」

「せ……」


男性に対して言うのは若干はばかられる内容ではあったが、もう真由美には、とりつくろう余裕はなかった。

これ以上頭を働かせることは、できなかった。


「生理痛が、ひどく、て……」


ありのままの症状を言った真由美に、神崎は戸惑いを一切見せず、真剣な表情で、真由美に向かって両手を伸ばす。


「ひゃ……っ、」


右手が膝下に差し入れられ、左手は背中に添えられ、気がつくと、真由美の体は宙に浮いていた。

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