不器用ハートにドクターのメス
その上には乱雑に書籍やノートパソコンが散らばっており、壁に直接ついている洋服かけには、ハンガーとともに一着の白衣がぶらさがっている。
「俺の宿直室だ」
辺りを落ち着き無く見回していたせいで、真由美が考えていることは、口に出さずともわかったのだろう。
尋ねるまでもなく、神崎の方から回答があった。
「宿直室……」
「外来に連れて行こうかと思ったが、えらく混んでてな。内科医に処置方法だけ聞いてきた」
長い指で目尻をかきやって、神崎はそう続けた。
自分が今、神崎の宿直室にいるという事実に驚きつつ、ふと、お腹に何かがのっていることに、真由美は気づく。
かぶさっているタオルケットを少しめくり上げて、確認する。
その正体は、局部を温めるために使用する、ホットパックだった。
生理痛がひどい時には腰回りを温めればいいことは、長年痛みと付き合ってきた真由美も、よく知っていることだ。
この大判のホットパックは、たしかリハビリ室にしかなかったはずだ。わざわざ取りに行ってくれたのだろうか。
混乱しながら神崎を見ると、ちょうど視線が重なる。
神崎の目には、真由美を案じる感情が浮かんでいた。
「……どうだ、具合。少しはマシか」
「は、はい……」
「そうか。よかった」
安堵をともなった神崎の声は、真由美の心をもじんわりと温めた。
神崎に心配してもらえたことで、辛かった今日一日が報われたようだった。
不謹慎だとは思いつつも、真由美の中に、嬉しいという感情が、ふつふつと込み上げる。