不器用ハートにドクターのメス
真由美の中に、熱がともっていく。
まるでガソリンでも浴びせているかのような伝達速度で、手首から、次々と火が移っていく。
先生の指は神様の指だ、と、常日頃、真由美は思っている。
たくさんの人の命を救う指。そんな指に今、優しく触れられているなんて、真由美にとっては、昇天してしまいそうな出来事だった。
手首は解放されたものの、どこを見ていればいいものかわからず、真由美は視線を壁の方に逃す。
目に入った小さな壁時計は、午後7時近くを示しており、真由美はその時初めて、ずいぶん時間が経過していたことを知る。
オペは時間通り、定時内に終わったはずだ。計算上、自分は2時間ほど眠ってしまったことになる。
わざわざ病棟までホットパックを取りに行ってくれただけでなく、先生は、自分が起きるまで待っていてくれたのだろうか。
申し訳なさに、真由美は胸を軋ませる。
枕に頭をつけたまま、戸惑いながら右隣に視線を戻すと、神崎がゆるやかに微笑んだ。
「……っ、」
……どうしてこの人は、威厳のある顔も、優しげな表情も、両方持ち合わせることができるのだろう。
感情が波立ち、喉の奥がきゅっとしまったのを感じながら、真由美は口を開く。
「せ……先生……」
「ん?」
「あの、もう起きられます……」
「無理すんな、まだ寝てろ。あー……もし俺のことが気になるなら、出ていくから――」
「〜い、いえ!ほんとに、もう大丈夫なので……」
真由美は勢いよく首を振ると、ゆるゆると体を起こしにかかった。