不器用ハートにドクターのメス
……まさか、こんな展開になるなんて。
着替え終わり、指定された通り職員専用出口で待っていると、数分もしないうちに、神崎のものとおぼしき車が、目の前に滑り込んできた。
待っている間もソワソワものだったが、車を前にして、真由美の心臓の落ち着きのなさは悪化する。
ブラックの、デザイン性のあるアルファロメオ。
車に詳しくない真由美には車名はわからなかったが、それでもとてもいい車なのだということは、ぱっと見ただけで察知することができた。
車が停まって十数秒。失礼します、と可愛らしく笑って助手席に座る……という一連の動作に及ぶことができず、真由美は、その場に棒立ちになっていた。
真由美は、生まれてこのかた、男性の車というものに乗り込んだことがない。
本当に自分なんかが、神崎の車の助手席に乗り入っていいものか、わからなかったのだ。
口をきゅっと結び、気を付けの姿勢で固まっている真由美を見て、神崎は窓の奥で、少し笑った。
そして窓越しに、助手席を指し示し、「乗れ」というジェスチャーをしてみせる。
恐れ多さを覚えながらも、真由美はそこでやっと手を伸ばし、助手席のドアを開けることができた。
「おっ、お邪魔します……」
「おー、早くお邪魔しろ。どのへんだ?家」
躊躇しながら、助手席にそろっと尻を着ける真由美に、神崎が聞いてきた。
本当に送ってくれるのだといよいよ実感し、真由美の緊張はピークに達する。