いつか孵る場所
翌日の夕方。
ようやく透は帰ってきた。

「おかえり」

「ただいま」

透はハルの額に軽くキスをする。

「透」

ハルは透の袖を掴んだ。

「昨日、ビックリしたよ」

ハルはクローゼットの方向を指差す。

「ああ、家から持ってくるの、面倒だろうなって思って」

− そういう感覚で…あの量? −

当分、着るには困らない大量の服や靴。

ハルの言いたい事がわかったのか

「まあ、何枚持っててもいいでしょう。
腐るものでもないし」

サラッと流したかと思ったら。

「きっとすぐに必要になる時が来るから」

ニヤリと笑う透。

「もう!
何企んでるのよ?」

ハルは透の頬を両手で挟んだ。

「僕は何も企んでないよ。
きっとハルに似合うだろうなって思って選んだだけ。
僕のペースに付き合わせてる、せめてものお詫び」

透はハルの手に自分の手を重ね、下に降ろした。
そのままハルの腰に手を回して抱き寄せる。

「不満?」

「…住む世界が違う」

文句らしき事を言うハルの口を透の唇が塞いだ。
呼吸が出来ないくらいハルの口を塞ぐと

「住む世界が違う?
何言ってんの、この世界は1つしかない。
現にハルと僕は今、ここに一緒にいるじゃないか。
これの何処が違う世界なの?」

ハルが反論しないうちに再度、透はハルの口を塞ぐ。

− 今日はちょっと攻めてみようかな −

透の背中に少しだけ黒い羽根が生えたようで。

この後、言葉で攻められ、口も何度も塞がれ、ハルはとうとう降参した。



「もう、そんな風に言うなよ?
そんな事、思ってたらこの先、一緒になんか暮らしていけないよ」

ハルは息を切らしながら透の胸の中で頷く。

「何があっても胸を張って堂々としてたらよい。
焦って慌てたりしたら、負けだよ。
わかった?」

うん、としか言わせない。

ハルは観念して頷く。

「ごめん、ちょっとやり過ぎた」

いつもの優しい透に戻り、ハルの額に軽くキスをして微笑んだ。



グウッ…



ハルのお腹が鳴る。

「ハルのお腹はムードぶち壊すね」

透は半笑い。

「…ウルサイ」

ハルは透の両頬を軽くつねって引っ張る。

「昨日からやたらお腹が空くの。
病気かしら?お医者様?」

透はハルの手を頬から離し、

「では、ご飯食べてからじっくり診察させて頂きます」

もう一度、透はハルを優しく抱き寄せ、キスをした。
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