いつか孵る場所
− お腹が空く…か −

翌日、医局で産婦人科系の本を開いていたら黒谷は

「産婦人科医でも目指すのですか?」

と、聞いてきた。

「いいえ、調べものです」

淡々と返すが、黒谷はニヤニヤしながら、何も言わずに席に着いた。

− まあ、仕事の緊張から解放されて食べられている、という事もあるのかな −

一方ではそう思う。

まだ、何の確証もない。
ただの『勘』
医師としてではなく、人間の第六感と言うべきか。

まだ半信半疑だが密かに準備を進める。

親に会うにしてもそれなりの格好ではないと鼻で笑われる。
自分としては別に普段のハルの服装が悪いなんて思っていない。
けれど、ケチを付けたがる人間はそういう隙があるととことん攻める。
ハルの機嫌を損ねないように何気なく型にはめていくのは神経を使う。



透は本を閉じると、医局を出て病棟に向かった。



黒谷はそっと立ち上がり透の机に置いてある本を見つめる。

「…いよいよかな」

思わず呟いた。
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