いつか孵る場所
「寝られない?」

夜中2時過ぎ。
透はベッドの中でそっとハルを後ろから抱きしめた。

「うん…」

ハルは透の手に自分の手を重ねる。

「短い期間に色々あり過ぎて、付いていけていない」

そしてゆっくり体を回転させて透と向き合う。

「いまだに夢の中にいるような気分。
朝になれば自分の部屋で起きて仕事行って…。
透とも再会していない、毎日同じ生活の繰り返しなんじゃないかと思う時がある」

でも…。

ハルは自分の左手を出した。
薬指に輝く指輪。

「本当なのよね?」

透は返事の代わりにハルの唇にキスをした。

「本当。夢じゃないよ」

もう一度、優しいキスをする。
ハルもそれに応える。
しばらくして二人は唇を離し、目を合わせて微笑んだ。

「ねえ、透のご両親、もっと怒るかと思っていたのに…」

「きっと僕たちが行く前に兄さんと桃子さんが色々話をしてくれていたんだと思うよ。
…じゃないとあんな二世帯住宅の見積書なんて出てくるわけがない」

腹立ち紛れに透が言うのでハルはクスクス笑った。

「でも、実際ハルはどう思う?
僕はハルの立場を考えると負担になると思う」

「あまりに干渉されると辛いかも」

「やっぱり…断ろう」

でもね、とハルは透の胸に顔を一瞬埋めた。

「透、今まで自由にさせて貰ったと思うなら、それを返す時かもしれない。
きっとお義父さんもお義母さんもそういう事をこの短期間で考えるのは寂しいのかも」

− ハル… −

透は少し困った表情でハルを見つめた。

「私はナツが気軽に帰って来られる環境があれば大丈夫だから。
逆に何かあった時に頼れる人が傍にいるのは心強いかも」

透はハルの腰に回した手に力を入れた。

「…じゃあそれは前向きに検討してみる」

「ええ、そうして」

「ただ、僕が拒否反応起こしそうだけど」

ニヤリと笑う。

「拒否反応を起こすなら二世帯住宅の案が出た瞬間に却下していると思うけど?」

ハルは透の首筋に唇を這わせた。

「ハル…」

透は息が洩れそうになる。
体を少し起こし、ハルの正面に向くと体を軽く押さえつけた。

「煽るならこの後、寝られなくするよ…」

そう言うと今度は透がハルの耳にキスをしてそのまま首筋に沿って下りた。

「ハル…覚悟しろよ…」

「受けて立つわよ」

どうせ寝られないのは一緒だ。

ハルは強引に透のキスを奪う。
透も負けじと返した。
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