いつか孵る場所
「うわぁ…」

お昼前に車で到着した家。
駐車場には何台もの高級車が並んでいる。
家はハイクラスの純和風旅館並みの大豪邸だった。
ハルは思わず声を上げる。

「大丈夫、見かけ倒しだから」

いやいや、見かけ倒しではないでしょ。
ハルは突っ込みたかったけれど、目の前にある光景に突っ込むことさえ忘れる。



「いらっしゃい」

玄関にいたのは40代後半くらいの女性。

「琥珀姉さん、お久しぶりです」

透は頭を下げる。
ハルも初めまして、と頭を下げた。

「初めまして、ようこそいらっしゃいました。
どうぞお入りください」

後でこの人は父、純の長兄の娘、つまり透の従姉に当たる土師 琥珀(はじ こはく)と教えられた。
沢山いる従兄弟・姉妹の中では一番柔軟性のある人とも。
夫は現在、海外に単身赴任をしている外資系の会社員だ。

「至さんはもう来てるわよ」

琥珀はそう教えてくれた。
至はこの従兄弟・姉妹総勢10人の中で一番年上になる。
それなりに敬意を払われている。

「おお、透」

話声につられたのか至が中から出てきた。

「ほぼ全員そろってるぞ」

「…まだ約束の時間の30分前なのに?」

「まあ、皆、年寄りだからな。仕方がない」

従兄弟・姉妹はまだ何人か来ていないが、その親たちの気の早いこと。

「はあ、顔合わせたくない」

透の呟きはハルの不安を増長させた。



大きなリビングには大きな和テーブル。
本家の主であり琥珀の父、武が一番奥にドカッと座っていた。

「ご無沙汰しております」

透はハルの手を引いてその前に行き、正座をした。
ハルはその少し後ろに座る。

「お前には長らく会っていないなあ。
至の結婚式以来じゃないか?
随分とこの家から逃げまくっていたんだな」

いきなり武は透を牽制した。
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