いつか孵る場所
「遅かったじゃないか」

「…ちょっと様子を見に」

透はハルにしばらく付き添ってから宴に戻ると琥珀の弟、碧(あお)に声を掛けられた。

「お前さ、そんなに一途で優しいタイプだったっけ?」

こいつも曲者。
透より3歳年上で国立大法学部卒。
今は市会議員をしている。

「…長年会っていないのにそういう事、わかるわけ?」

「少なくとも高校までは見てる。
至兄さんは周りの大人に対して従順で賢くて愛想良いのにお前は頭は良いけど反抗ばかりで掴み所ないし、協調性ないし。


透は苦笑いをした。
よくもまあ本人を目の前にして言うな。

「奥さん、高卒ってイトコでは初めてじゃないか。
お前なら同じ医者を選びそうなのに」

「学歴なんて関係ない。
人間性だよ。
それと自分がその人といて幸せを感じるかどうか」

碧は大きくため息を吐いて

「本当にお前ってつまらない奴だな。
そんなロマンチストだった?」

「何とでも言え」

くだらないのはお前の方だ、と口から出そうになったが何とか押さえた。

今は何を言われても大丈夫。
ムカつきはするが、放置出来る。



それは…

ハルへの自分の想いだけが突っ走っているんじゃないかと思う事が度々あったけれど、そうじゃなかった。

想いなんて形のないものだけれど、ハルがあんなに泣くなんて。
しかも自分を想って泣いていたなんて。

少なくとも透は幸せだと思っている。
ハルも自分の想いと変わらず透を想ってくれている。
それがどれだけ幸せな事か。

悪口ばかり言ってるこの親戚達はこういう幸せを知らないのだろう。
目に見える事ばかりにこだわって本質を知らない。
逆に憐れだと思う。
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