いつか孵る場所
「透先生、これどうぞ」

12月24日、クリスマスイブ。
今日は当直だ。

小児科病棟に顔を出すと看護師長の河内が透にクリスマスラッピングした小さな包みを渡す。

「ありがとうございます」

中身は小分けのお菓子。
今朝、小児科病棟にサンタクロースが現れ、子供たちに配っていたらしい。

「院長先生、頑張って扮装していましたよ」

「まあ、サンタにはちょうどいい歳ですしね」

透の返答に思わず河内は笑った。

「奥様はまだ…?」

「そうですね、まだ何もないみたいです」

のんびりしているよ、と透は思う。
切迫早産で入院していたのが嘘みたいだ。



今日は小児科夜間診療の輪番制に当たっている。
透はその日の当直医。
土曜日なので更に忙しい。



夜中12時を過ぎたころ、ようやく人がまばらになる。
思わず大きく呼吸をする。
立ち上がろうとした時、内線が鳴った。

「はい…、えっ」

内線はLDRから。
この1時間前にハルが自宅で破水してついさっき、入院したとのことだった。



頭の中で半分は今すぐに行け、という自分。
半分は受診者が少なくなっているとはいえ、仕事を全うせよという自分。

透は大きく息を吐いた。
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