いつか孵る場所
産科にある5部屋のLDR。
そのうちの1つにハルはいる。
産科のスタッフステーションに声を掛ける。

「先生、産まれた後、ご自分でチェックされますか?」

「はい、出来れば全て」

「え」

「沐浴もします。自分が出来る事全て。駄目ですか…?」

チラッとその助産師を見る。

「あ、じゃあ、オペ着に着替えてくださいね。
担当の助産師にはカメラでも回してもらいましょうか」

「え~…、それは恥ずかしいですよ」

「だって先生、普通のお父さんらしくカメラとか持ってきてないでしょ?
それくらいはしますからね~!!」

彼女はにこやかに笑って透を部屋に案内した。



ハルは呼吸を整えるのに必死だった。
何度も味わったことのない痛みに襲われる。
付いてくれている助産師が何度も励まし、呼吸を一緒にしてくれる。



「ハル、遅くなってごめん」

青いオペ着を着た透がやって来た。

「え…、どう、して?」

透はもう、来ないと思っていた。

「黒谷先生が来てくれたんだ」

ハルの目から安堵の涙と黒谷への感謝の涙が混って流れた。

「さあ、旦那様も来てくれたことですし、頑張りましょうね!」

担当の助産師はにこやかにハルを慰めた。
ハルは痛みをこらえて頷く。

「先生、多分このままいけば朝までには産まれると思います」

助産師の意見に透は頷く。

「ハル、頑張って」

透はハルの額に浮く汗を拭く。
苦痛でたまらない顔をしているハルが気の毒で仕方がない。
それでも代わる事の出来ない仕事だから。
とにかくハルを励まして少しでも痛みが取れるように腰や尾てい骨辺りを押す。



「じゃあ、先生を呼んできます」

午前5時過ぎ、助産師は一旦退出して先生を呼びに行った。
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