いつか孵る場所
それからしばらくして4月下旬のよく晴れた日曜日。

「お兄ちゃん!」

「なっちゃん」

透が手を広げるとナツは透にしがみついた。

ハルとのデートは公園でナツを連れて遊ぶ、がメインだった。

日曜日、図書館へ行くと言って出掛け、そのまま待ち合わせの公園へ。

幸い、透の家からは遠いので両親にバレる事はまずないだろう。

「毎回ごめんね」

ナツが一人、滑り台で遊んでいる間、二人はベンチに座っていた。

「いいよ、楽しいし」

透にとって、ナツと遊ぶのは本当に楽しかった。

その間に交わすハルとの会話も心地よかった。

「でも、受験勉強は?」

「家でするから大丈夫」

透はそう言って笑った。

心配をしてくれるハルの気持ちが堪らなく愛しい。

思わずハルの手を握りしめる。

「こうして一緒にいてくれるだけで僕、頑張れるから」

「…私も」

ハルは透き通るような目で彼を見つめた。

「一緒にいると苦しい事や辛い事も忘れられる」

ハルは母親の代わりに家事やナツの面倒を見ていた。

友達と遊びに行きたいのに行かずに。

段々友達も減り、高校でも孤独感に襲われる事も度々あったという。

そんな時、ふと見掛けた透。

たまに友達と一緒にいる時も見るがほとんど一人でいる感じだった。

まあ入試も断トツだし、周りが敬遠するのもわかる。

でもそういう事を気にする様子もなく、自分のペースで動いている彼を見ていると自分にはない強さがあって羨ましかった。

「僕達、本当にお互いに無いものに惹かれてるね」

透は苦笑いをした。

こんな風なデートが何度かあった。
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