いつか孵る場所
「まあ…確かに出来たら両親にとっては初孫だけど」

食堂を出て、廊下を二人はゆっくり歩く。

「でも…さすがに…」

至は腕組みをして悶々と悩み始めた。

「やっぱり先に絶対に結婚する意思を見せないと…」



二人は急に立ち止まった。

前から父親が歩いてくる。

たまにこの様に3人が会う事があるが、今日は至も透も会いたくなかった。

二人は父親に軽く頭を下げて足早に立ち去ろうとしたが

「透」

と呼び止められた。

透は前髪を掻き、振り返る。

「はい、何か?」

あまりにもその言い方に棘があって隣の至が凍り付きそうだった。

「今度の日曜は休みだな?昼から見合いする段取りにしてある」

「お断り致します」

透は即答すると踵を返して歩き始める。

「いや、駄目だ。いい加減落ち着いて貰わないと」

透は目を釣り上げて振り返る。

「僕は結婚前提でお付き合いしている方がいます。干渉しないでください」

「ではちゃんと家に連れて来い」

父の声が大きい。

周りの医師や看護師、通りすがりの患者や見舞いの者が見ている。

透は軽く舌打ちをして

「まだそういう段階ではないと僕は思っています」

透は父親を軽く睨み付け、続ける。

「患者さんが待っていますのでこれで失礼します」

足早に立ち去った。
至もその後を追うように去る。



二人の父親はため息をついて再び歩き始める。

親子喧嘩を見ていた周りの医師や看護師は慌てて自分の仕事に戻った。
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