さくらの花が舞う頃に
その瞬間、俺の中で何かが切れた。
何も知らないくせに。
わかったような口聞いて。
そんなことをしてはいけないのはわかってた。
だけど、そのときの俺は自分で自分を抑えることができなかった。
大股で戸山に歩み寄り、戸山の胸ぐらを思いっきりつかむ。
俺より少しだけ背の低い戸山が至近距離で俺を見上げた。
「知ったかしてんじゃねーよ。お前に何がわかんだよ。
あのとき、俺がどんな気持ちでさくらに『興味ない』っつったかわかるか?
そうするしかなかったんだよ!あのままさくらと付き合ってたら、結衣が絶対バラしてた。
そうなったら、さくらはあれだけ入りたがってた北丘大学にいけなくなるんだよ。
自分の好きな人の人生を自分が壊すことなんてできねーだろ!」
………つい本音を言ってしまった。
戸山を相手に何言ってんだと思ったけど、これが俺の本心だった。