さくらの花が舞う頃に




その瞬間、俺の中で何かが切れた。




何も知らないくせに。



わかったような口聞いて。




そんなことをしてはいけないのはわかってた。



だけど、そのときの俺は自分で自分を抑えることができなかった。



大股で戸山に歩み寄り、戸山の胸ぐらを思いっきりつかむ。



俺より少しだけ背の低い戸山が至近距離で俺を見上げた。




「知ったかしてんじゃねーよ。お前に何がわかんだよ。

あのとき、俺がどんな気持ちでさくらに『興味ない』っつったかわかるか?

そうするしかなかったんだよ!あのままさくらと付き合ってたら、結衣が絶対バラしてた。

そうなったら、さくらはあれだけ入りたがってた北丘大学にいけなくなるんだよ。

自分の好きな人の人生を自分が壊すことなんてできねーだろ!」






………つい本音を言ってしまった。



戸山を相手に何言ってんだと思ったけど、これが俺の本心だった。





< 446 / 463 >

この作品をシェア

pagetop