大人の恋は波乱だらけ!?
「ごめんな、いきなり」

「い、いえ……」



何分、何十分、キスを繰り返したかは定かではない。
だが、漸く離された唇は少しだけピリピリと痛みを感じた。



「とりあえず、上がってくれ」

「お、お邪魔します」



未だ玄関にいた私たちは、部屋の中、リビングへと移動する。
当たり前だけど、高梨部長の匂いがする。
周りを見渡せば、彼らしい落ち着いたトーンの家具たちが私を迎えてくれていた。


漸く私は高梨部長の部屋にいるのだと実感する。
そこからは早かった。
一気に熱を帯びる顔は鏡を見なくたって真っ赤に染まっている事が分かる。
そんな私を見た高梨部長は、細長い手を伸ばし私を抱きしめた。



「た、高梨部長!恥ずかしい……です!!」



必死に訴えるが彼は腕の力を緩めることなく私を強く抱きしめた。


本当にどうしたのだろうか。
いつもの彼は大人で、余裕の笑みをさえ感じる。
だけど、今の彼はどこか切羽詰っている様にも見える。
心配になった私は口を開きかけるが、それは自然と閉じていってしまう。
彼の弱々しい声が耳元に響いて、言葉すらも出なくなったからだ。



「何だってそんなに可愛いんだろうな、お前は」



からかわないで下さい、そのひと言さえも出せない。
そんな言葉を軽く言える様な空気じゃなかった。
彼が考えている事が分からない、でも知りたくて私は高梨部長を抱きしめ返した。
すると彼は、大袈裟な程に体を揺らした。
そして力なく笑う。



「行動のの1つ1つが。
その仕草が、コロコロ変わる表情が……俺の心を鷲掴んで離さない。
こんなにも誰かを好きになったのは初めてで、どうしたらいいか分からないんだ」



彼は私の体をそっと離すと、そのまま何処かへと歩いて行ってしまう。
一瞬、戸惑ったが私は彼の背中を追いかける事にした。
< 274 / 514 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop