大人の恋は波乱だらけ!?
「わっ……」



思わず漏れる声。
直ぐに口を塞ぐが彼はクスリと笑みを返してくれる。
コホンと小さく咳払いをして彼の横に立つ。


目の前には、真っ暗な世界が広がっていた。
でも、大きな窓の奥には宝石を散らばせた様な、何とも美しい世界がある。


その世界は私には似合わない豪華なモノ。
それでも、少しでも近付きたくて手を伸ばす。


めいいっぱいに手を伸ばしても、窓にすら当たらない、そんな距離。
自分でも何がしたいかは分からない。
綺麗な世界を見つめていれば、横から肩を抱き寄せられた。


驚きながらも見上げれば優しく目を細める高梨部長がいた。
彼の体から伝わる体温が心地良くて、彼の方に頭を預けて目を瞑る。
優しく包み込むシトラスの香りが、胸を高まらせた。



「1人で見るこの景色は、俺にとって恐怖でしかなかった」

「え……?」



彼の口調は穏やかだった。
でも、それに似つかない言葉は驚きでしかない。

この景色が恐怖?

私にはどうしても理解が出来なかった。
目を開いてもう1度、景色を見つめる。
何度見ても綺麗なその世界は、恐怖なんて言葉は想像もつかないから。



「俺にとって、このマンションも、この景色も檻みたいなもので……。
ここから出る事も出来ないんだ」

「高梨部長……?」



“檻”なんて物騒な事を言う彼の顔からは、決して大袈裟なんかじゃないと思えるほどの何かが伝わってくる。
でも私にはその理由が分からない。
彼は一体何を抱えているというのだろうか。


胸がチクリと痛む。
高梨部長の笑みはいつもの優しいだけの顔じゃない。
哀しみが含まれているようなその笑顔に、無性に泣きたくなった。
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