大人の恋は波乱だらけ!?
「この広い空間で、いや。
もっと言えばこの世界に俺しかいないんじゃないかって思う時がある」


哀しそうな瞳は、彼が言う恐怖の対象であるという景色を見つめていた。
横顔からでも分かる、彼の瞳が揺れている事が。
私は言葉の代わりに彼の腰元に手を伸ばした。
肩を寄せ合ったまま2人で窓の外を見つめる。

私たちの目に映る景色は同じもの。
だけど、そこに感じている想いは全く違うんだと実感する。


「……高梨部長は1人なんかじゃありません。
私がいます、だから大丈夫ですよ」


彼の方を見ずに言葉だけを向ける。
私の想いが高梨部長に伝わったかは分からない。
でも、肩を抱き寄せる力が強まったのは確かだった。


「……俺がお前を好きになったきっかけを知っているか?」

「いえ、見当もつきません」


素直に言えば、クスリと笑われる。
その笑い方は、いつもの彼の笑い方と全く同じだった。
優しさが滲み出るかの様なそれに私も小さく微笑む。

彼は私の手を引き、傍にあったソファーへと身を沈めた。
必然的に私の体もソファーへと座る事になり、2人で身を寄せ合いながら大きなソファーに体を預けた。


「俺がお前を好きになったのは……」


いきなり始まった話に私は身を硬くする。
彼氏から好きになったきっかけを聞くなんて恥ずかしくて堪らない。
でも、気になる。
そんな誘惑に負けて黙って彼の話を聞く事にした。


「多分、初めてお前の小説を読んだ時だった」

「え……?でも……」


私は戸惑った様に声を上げてしまう。
それもそうだろう、だって彼が私の小説を読んだのは、小説サイトでだ。
だから、私の顔どころか性別さえ分からない状態だったはずだ。
なのに……。
ふいに彼を見上げれば、高梨部長も私を見ていたのか視線が交じり合った。
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