大人の恋は波乱だらけ!?
「既に沢山の小説を読んでた俺は、もう何を見ても感動すらしなかった。
だけど、お前の小説を読んだ瞬間に全てが輝いて見えたんだ」

「え……?」


戸惑う私とは対称的に、キラキラと素敵な笑みを浮かべる高梨部長。
その顔はまるで子供みたいだった。
無邪気な笑顔を見ると胸が締め付けられる様に痛くなる。


「キャラたちが楽しそうに動く姿も、高い壁にぶつかって悩む姿も。
全てが新鮮に感じたんだ。
ストーリーは定番だったが、感じた事も無いザワメキが胸に広まった。
こんな小説を書ける人間に会いたい、純粋にそう思ったんだ。
多分、その時から俺は名前も、顔も、性別さえ知らないお前に恋をしていた」


懐かしそうに微笑む彼に私は黙ったまま俯いた。

高梨部長が見つけてくれた私のちっぽけな小説。
数ある小説の中で埋もれて、誰にも気付かれずに終わるはずだったモノ。
それが彼の手によって掘り起こされたんだ。

思い描いていた夢とは違うけど、私に新しい夢を与えてくれた。
どんなに感謝しても、彼に全部は伝えられないだろう。
ギュッと痛いくらいに掌を握りしめる。
そんな私に気が付いたのか高梨部長はそっと、私の手を握りしめた。


「そして、お前に会った。
凄く緊張していたくせに、小説の話になると人が変わって見たいにいい笑顔で笑って」


初めて会った時の事を思い出しているのか彼はクスクスと笑った。
私と繋いでない方の手で、拳を作りながら口元に添えている為、口元は見えない。
だけど、これでもかってくらいに目が細まっている。

笑いすぎだよ。顔が熱くなるのを感じながら高梨部長に線を向ける。
可笑しそうに笑う彼を見てると少しホッとした気持ちになる。
すると自然に、握りしめていた手が開いていく。


「そんなに変わらないですって」

「自覚してない所がまた可愛いな」

「もう!」


高梨部長はいつもの様に私をからかうと、コテンと私の頭に自分の頭を傾ける。
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