大人の恋は波乱だらけ!?
「何でお前は……いつもいつも俺を狂わせるんだ……?」

「え……?」


高梨部長の言っている意味が分からなくて、思わず黙ったまま彼を見上げた。

私が高梨部長を狂わせる?
そんな事をした覚えはないし、そんな事を出来るなんて思った事もない。

だって彼はいつも冷静で、大人で。
どんな場面でも落ち着いていて……。
そんな彼が私ごときでペースを乱されるなんて事があるのだろうか。

不思議に思っていれば、彼の大きな手が私の頬を優しく包み込んだ。


「会社でだって、さっきのバーでだって、今だって……。
お前が見せる1つ1つの表情に……俺は心を乱されるんだ。
お前を押し倒して、自分のモノだって刻み込みたい、他の男にお前を見せたくない。
自分では抑えられないほど黒い感情が湧き上がってくるんだ」


辛そうに、苦しそうに、哀しそうに。
それらの感情が複雑に入り混じっている、そんな顔をしながら私を見る彼。

そんな高梨部長を見ていると、よく分からない気持ちになる。
嬉しい様な、申し訳ない様な。
自分でも分からなくて、それが知りたくて私は彼の首に腕を回しゆっくりと引き寄せた。

驚きを隠せず目を丸くする高梨部長を見ながらそっと目を閉じた。
重なる唇、シトラスの香り、唇の柔らかさ。
五感で彼を感じていれば、胸の奥がトクンと脈を打ち、次第に熱くなっていくのを感じた。

唇を離した後も、胸の熱さは治まらない。
もしかして、これが好きって気持ちなのだろうか。
胸の奥が騒ぎ立てるくらい、私は彼が好きで好きで堪らないのか。
自分の気持ちなのに、手に取る様には分からない。
でも、胸が熱くなるのと同時にチクリと針で刺される様な痛みを感じるんだ。
その理由は分からない。
でも、知りたくはない、知ってはいけない。
私の直感がそう告げている気がした。
だから、それを振り払う様に、もう1度、彼の唇に自分の唇を重ねた。


「私だって、貴方を他の女性に見せたくない。
高梨部長が女性に見られていると、私の彼氏なのに、って心が痛くなるんです。
……私たちって、似ているんでしょうかね?」


クスリと笑い彼を見上げる。
高梨部長の顔は未だに紅くて、可愛らしいという表現がピッタリだった。
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