大人の恋は波乱だらけ!?
今のは流石に傷ついたよ……。
ふと、彼を見れば、耳まで紅くなっているのに気が付いた。
照れている、一瞬で理解した私の心には悪戯心が芽生えていく。
服とバスタオルを床にそっと置き、彼へと気付かれない様に背中へと回る。
そして。


「わっ!」

「……っ!?」


驚かす様にその背中へと抱き着いた。
彼の背中から伝わってくる温もりがどんどんと熱くなる。
成功したかな?
心でほくそ笑んでいれば、高梨部長の体に回していた手を力強く掴まれる。
そして、立った高梨部長に引っ張られてどこかへ連れて行かれた。


「た、高梨部長……?」

「……」


怒っているのかひと言も喋らない高梨部長。
焦った私は何度か声を掛けたが結果は同じだった。

どうしよう。
初めての彼の部屋なのに怒らせてしまった。

泣きそうな気持になりながらも、高梨部長についていく。
彼が足を止めたのは寝室のベッドの前だった。


「た、高梨部長……?」


立ち止まった彼に声を掛ければ、勢いよく手を引っ張られた。
バランスを崩した私はそのままベッドへと倒れこむ。
柔らかいベッドだったから痛みはないが、それなりに衝撃はある。
反射的に瞑っていた目を開ければ私に覆いかぶさる様に高梨部長がいた。
恐い、その気持ちはなかったけど、明らかにいつもの高梨部長ではなかった。
目が、さっきと同じ雄の目だった。


「ったく……お前は無防備にもほどがある。
そんな格好で男に抱き着くなんて、襲ってって言ってる様なもんだぞ」


真剣な目で見下ろされれば何も言えなくなった。
何も考えていなかった。
男性の気持ちなんて。
私はただ、彼を驚かせたかっただけだ。
特に意図があった訳じゃない、それでも、男性が本気になったら私は無力でしかない。
今だって彼の手から少しも逃れることは出来ないんだから。
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