SECRET COCKTAIL
「こんばんは。美來ちゃんだったよね?」
あの時雅弥と名乗った彼が、そこにいた。
「え、あれ、あの、お兄ちゃん・・・」
動揺して口ごもる私に、目の前の彼は可笑しそうに目を細める。
「穂積なら、下に行ったよ。すぐ戻ってくると思うけど」
「・・・そうですか」
「どうした?何か聞きたいことでもあった?」
彼が指すのは、私の手元にある教科書。
確かに課題の内容で分からない問題があったから、教えてもらおうと思ってここに来た。
私と違って、お兄ちゃんは物凄く頭が良いから、こうして勉強を教えてもらう事が良くあるのだけど。
「いいんです。また後で聞きますから。すみませんでした」
そう告げて、部屋を出ようとした私に。
「良かったら俺が教えるけど?ほら、おいでよ」
「そんな、いいです。後でお兄ちゃんに、」
「いいから、ちょっと見せてみ」
優しく微笑んだ彼が手招きするから。
その誘いに乗るように教科書を手渡して、ぺたんと近くに座ってしまった。