SECRET COCKTAIL
チリン。
と、ドアが開く音がして。
雅君が、身に纏う雰囲気を変えた。
「いらっしゃいませ」
私には決して向けられる事のない、営業スマイルを口元に浮かべる。
「ミヤビー、来たよぉ」
媚びた女性の声が聞こえて。
私は更に眉間の皺を深くした。
雅君をミヤビと呼ぶ人達が苦手だったからだ。
雅君にとって大切なお客様である事は充分に分かっているけれど、どうしても好きになれない。
それは、ここに通う彼女たちにとっても同じ事で。
お決まりのようにいつもここにいる私に、忌々しげにチラリと視線を寄越すと。
雅君には気が付かれないようにすぐに態度を変えて、その顔にとっておきの笑顔を浮かべた。