SECRET COCKTAIL
「それでも雅君は、お店を継ぐことは考えなかったの?」
純粋な興味で聞くと、雅君は苦笑いして頷いた。
「親父は好きな事をしていいって言ってくれてる。自分もそうだったから、店に縛られなくていいって」
「そうなんだ。でも、料理もすごく上手なのにね」
「料理を作る事は好きだけど、俺は自分で自分の道を見つけてみたいと思ったんだ」
「見つけたの?」
「いや。ただ漠然と大学に入ったから、正直いろいろ迷ってたけど」
「けど?」
「最近、面白いって思うようになってきた。人に何かを教えるっていう事が」
「あ・・・」
「だから今は、教師になりたいって思ってるよ」
雅君は悪戯気にニヤリと笑みを深めて。
「美來のおかげだな」
そう言って手を伸ばして来て、私の頭をくしゃりと撫でた。