SECRET COCKTAIL
だけど、一人でカウンターに座って飲んでいる人や、テーブル席に座って静かにグラスを傾けるお客様たちの中には、純粋に雅君が作るカクテルのファンも多くて。
狭い店内は、開店してからしばらくすると、すぐに満席になってしまう。
だからこそ、開店前からの一時は私にとって貴重な時間なのだ。
だけど、流石に。
もう帰ろうかな。
そう思い始めた所で。
お客様のグラスを下げた雅君が、目の前に来てくれた。
「もう一杯飲むか?」
チラリとこちらに視線を寄越しながら、小さな声で声を掛けて来るのは。
他のお客様に気付かれないようにするためなのだろうと思う。
雅君目当てのお客様に、私が敵視されないようにするための配慮なのだろう。