SECRET COCKTAIL
何事かと思って雅君と二人で顔を向けると、そこに険しい顔をしたお兄ちゃんが立っていた。
いつも私の部屋に来る時は、必ずノックするのにめずらしい。
なに?と問い掛ける前に、お兄ちゃんが口を開いた。
「雅弥」
抑揚のない、低いトーンで発せられた声。
そんな声を聞くのが初めてだった。
お兄ちゃんの顔は、いつもの穏やかさの欠片も垣間見えない位険しいままで。
それだけで、なぜか胸がざわついた。
「なんだよ?」
雅君は、そんなお兄ちゃんに気が付いていないのか、視線をテーブルに戻して参考書をめくり始めた。