SECRET COCKTAIL
雅君は通り掛かったさっきの黒服の人を手を上げて呼び止めて、何かを告げる。
「穂積は知ってるのか?」
「・・・うん」
嘘は言ってない、はず。
諦めたような溜息が、一つ落とされた。
「あまり長くはいられない。一杯だけ付き合うから」
雅君の声が、いつものように穏やかなものに変わった事に気付いて、強張っていた身体がホッと緩んだ。
「うん。ありがとう」
どうしても、直接雅君に合格の報告をしたかった。
そんな一方的で衝動的な感情が、私の足をここに向けた。
もう一度だけ、会いたかったんだ。
これが最後になってしまうとしても。