SECRET COCKTAIL
「そう。でもな、ある日旦那さんが亡くなってしまって。事実を知った旦那さんの両親が激怒して、息子さんを引き取って、彩芽さんに会わせてくれなくなったんだ」
「・・・・・」
「そんな時だよ。彩芽さんが俺の店に通うようになったのは」
「そう、だったんだ」
「随分荒れてたよな。俺を指名してくれるようになって、俺に随分金を使ってくれた。借金があんなに早く返せたのも、彩芽さんがいたからって事も大きい」
「でも、だからってどうして今でも雅君が」
「あの日、俺が彩芽さんに付き合った日。あれは、旦那さんの命日なんだよ」
「え・・・」
「ずっと、お墓に行けなかったって言ってた。自分にはそんな資格ないって。でも、あの日初めて向き合う決心をしたんだよ。一人じゃ尻込みしちゃうから、傍に居てほしいってお願いされたんだ。あの人は、現実を受け入れられない位、今でも旦那さんを愛してるよ」
静かに事実を話してくれる雅君の言葉に。
あの日、決意を込めた瞳で雅君を見つめていたあの人の表情を思い出す。
そこに、そんな思いを秘めていたなんて知らなかった。
あの時の大人びた二人の雰囲気に飲まれて、言葉の一つ一つを邪推する事しかできなかった自分が恥ずかしくなる。