強引な彼の求愛宣言!
給湯室から自分のデスクに戻って来た瞬間、スーツのポケットのスマホが震える。

画面を見ると、大学時代から付き合いのある友人からメッセージが届いていた。一応内容を確認してみれば、『久々に会って飲まないか?』というような話で。

……コイツも、今仕事中だよな? なにのんきに飲みに誘って来てんだ?

ああでも、たしか外回りやってるって言ってたから、結構自由きくのか。大変だろうけどそのあたりはうらやましい。



「(……ん?)」



ふと、気付く。

……そういえば松岡って、宮園信用金庫に勤めてたよな。もしかして、深田さんとも知り合いだったりして。

金融機関は異動が多いはずだ。ふたりが同じ支店で働いていたことがあるという可能性も、なくはない。



「………」



……いっちょ、松岡をダシに使うか。まあ、万が一深田さんとどうにかなれたとしたら、種明かしして詫びればいいだろ。

心の中で我ながら最低な決心をし、手早くメッセージに返信をする。

その日の夜までには、来週の金曜にふたりで飲みに行く話がまとまった。


どうやら自分でも思っていた以上に、後輩の言葉が俺を追い立てたらしい。

彼女が他の男のモノになるかも、なんて。考えただけで、胸の奥がざわついた。


もしかしたら、彼氏がいるのかもしれない。

以前宮信を訪れてコーヒーを出してもらったときに指輪はしていないようだったけど、結婚してる可能性だってある。

だけど、何もしないでいるのはもうできなかった。だって俺は、気付いてしまったのだ。

あの声を、笑顔を。自分のモノにしたいと、思っていることに。
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