かわいい君まであと少し
 聡さんにやってもらったのだろうか、髪の毛を一部分だけ赤い花の付いたヘアーゴムで結ばれていた。
 かわいい。そうだよ。妹さんが用意していた荷物の中にヘアーゴムが入ってたよね。明日から付けてあげよう。
「あの二人とも、何で同じような顔でニヤニヤしてるんですか。しかもスマホ見ながら」
 由加里に言われ、はっとした。望月課長のスマホの画面を見ると同じ写真が見えた。
 急いで画面を消して「ううん、ニヤニヤなんてしていよ」と言ってごまかした。
「ああ、何でもない」
 望月課長も会社用の顔に戻してカツ丼を食べている。
 由加里を見ると、面白そうという感じでこっちを見ていた。
 何か気がついたかな。いや、大丈夫だろう。
 私もサラダうどんの残りを食べ始める。
「あの、二人って、何かありました?」
 その言葉に私が勢いよく噎せてしまった。まさか、そんな直球で聞いてくるとは思わなかったからだ。お茶を飲んで少し落ち着けた。
「田中、その質問にどんな答えを望んでいるんだ」
「もちろん、怜子の幸せですよ。この子、最近いろいろあったから」
「そうか。なら田中が望んでいる答え通りだよ」
「望月課長」
 私は思わず止めに入った。望月課長と由加里の間に、謎の探り合いのようなものが見えたからだ。
「そうですか。それなら安心しました。まっ、頑張ってください」
「応援ありがとう」と言って、望月課長はトレーを持ち、席を立った

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