かわいい君まであと少し
 確実にこっちの会話が聞こえない距離まで望月課長が離れたことを確認して、由加里に話しかけた。
「ちょっと、今の何?」
「うん? 望月課長の本気を確認しただけ」
「本気って」
「言いたくないならいいけど、望月課長と何かあったんだよね。怜子の雰囲気が先週と何かが違う。それに今まで望月課長って、怜子の隣が空いていても絶対に自分から座るようなことはしなかった。だから真意を確かめたくて。お見合い相手のこともあるし」
 由加里は食べ終わった食器の乗ったトレーを少し横にずらした。
「まあ、本気でよかったわ。さすがに、また怜子がくだらない男に傷付けられるのは見たくないし。望月課長のことは前向きに考えなよ。で、タイミング見計らってお見合い相手のことを念のため確認すれば」
 ここで確認済みですって言うべきなのだろうか。そうなると現状を全て話すことになるし。別に悪いことをしているわけでもないけど、望月課長に許可も取らずに志穂ちゃんのことを話すのは悪い気がするし。
「何難しい顔してるのよ。無理して話さなくていいから」
「ごめん。確認してから話す」
 由加里は「そう」とだけ言った。

 午後の業務を全て終えたのはちょうど五時だった。望月課長の方を見るともう少しかかりそうだと思った。
 先に駐車場の方に行ってよう。
 メールに書かれている駐車場へ行き、その近くにあった本屋さんで待つことにした。よく考えれば自分は車の鍵を持っていない。
 入ろうと思った本屋さんは自分がネット通販でもよく利用している所だった。全国展開をしている本屋で、だいたいの人は知っているだろうというくらいの大きさだ。品揃えもよく、店内にはサラリーマンや主婦、学生さんといった多くの人が利用していた。

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