かわいい君まであと少し
 時間を見れば、もう七時を過ぎている。私たちは急いで荷物をまとめた。
「悪い、ベビーカー置いていってもいいか?」
「はい」
 望月課長は志穂ちゃんを抱っこし、私は志穂ちゃんの靴を持った。今朝と全く同じ状況になった。
「聡、明日もよろしく」
「聡さん、ありがとうございました。また、明日もよろしくお願いします」
「はい。志穂ちゃん、バイバイ」
 私たちは挨拶をしてから家に帰り、着替える間もなく志穂ちゃんをお風呂に入れた。
 お風呂を出ると、ちょうど八時になっていた。あとは服を着せて寝かしつければいい。
 聡さんにいろいろと遊んでもらったせいか、志穂ちゃんはすぐに眠りに就いた。
「志穂ちゃん、ぐっすりですね」
「ああ」
 二人で寝顔を見つめながら一息ついた。
「あの、明日の朝ご飯の下ごしらえをしたいんで、キッチン借りていいですか?」
「いいぞ」
 ワンルームのためキッチンしかライトが点けられない。望月課長は端に寄せられているローテーブルの前に座り、スタンドライトの明かりの中、荷物の整理をしていた。
「どうぞ」
 邪魔にならないように、テーブルに広げられている書類から少し離れたところにコーヒーを置いた。
「ありがとう」
「いえ。明日の朝ご飯のリクエスト何かありますか?」
「リクエストに答えてくれるのか?」
「まあ今から作るんで、だいたいの要望は聞けますよ」
 志穂ちゃんの睡眠を妨げないように小声で話す。普通の会話なのに、秘密の話をしているような気持ちになり、少しくすぐったい気持になる。

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