かわいい君まであと少し
 私は自分の手帳を取り出し、メモスペースを広げた。
「あと六日は私が食事を作るので、アレルギーがあるものと、苦手な食べ物を教えてください」
「はいはい。アレルギーはない。嫌いな食べ物はアボカド、練乳。好きな食べ物はカレー、肉じゃが、カツ丼、唐揚げ」
「好きな食べ物、育ち盛りの男子高校生みたいですね」
 メモに取ったものを見て、率直に思った感想だった。
 スタンドライトの明るさみで視野を保っているような状況でも、望月課長の顔が赤くなっているのがわかった。
「いいだろ。お子様の味覚でも」
「別に悪いとは言ってません。かわいいとは思いましたけど」
「なっ。もういい。俺は風呂に入る」
「はい。ごゆっくり」
 望月課長はスタンドライトを消すと、着替えを持ってお風呂場に行ってしまった。
 望月課長って、ちょっとかわいいかも。
 キッチンへ戻り、最低限の下ごしらえと使う食器を取り出しやすい所に並べておいた。
 眠る志穂ちゃんの横に座り、バッグから少し大きめの付箋を取り出した。
 一枚めくり、昨日の志穂ちゃんの様子と朝昼晩の食事を書いた。そしてもう一枚めくり、同じように今日のことを書いた。それをノートの終わりの白紙ページに貼った。
 きっと、お母さんと志穂ちゃんがこんなに長く離れることはあまりないだろう。それは不安でもあり、心配でもあるだろう。だからお母さんに少しでも志穂ちゃんの様子を伝えてあげたいと思った。

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