かわいい君まであと少し
「はい。夕ご飯は向こうで食べられそうですか?」
「どうだろうな」
「じゃあ、軽いもので夜食作っておきますね」
「ありがとう」
 窓の外からは眩しい太陽の光が入ってきた。たった二カ月前、ここのベランダで告白されたんだなと思った。
「外に何かあるのか?」
「いえ、天気がいいなと思って」
「俺はここで振られたなと思ったけど」
「その節は大変失礼しました」
 望月課長は荷物をまとめ「そろそろ行く」と言って、席を立ちあがった。そして私とすれ違いざま「いつでもおいで」と耳元で囁き、会議室を出て行った。
 私は一人、顔を真っ赤にしてその場にしゃがみ込んだ。
「ずるい」
 そんな言葉が口から出ていた。

 会議室から出ると、望月課長はもう会社を出て後だった。
「怜子、なんだか顔が少し赤いよ。熱でもある?」
 私の顔を見るなり由加里が心配そうに言った。
「ううん、何でもないよ。お昼行こう」
「そうだね」
 今日は私が早く仕事を終えたいの知っている由加里は「社食にしよう」と言ってくれた。こんなに天気のいい日は外で食べたがるのに。
 社食で二人揃って麻婆丼を食べていると「あ、田中さん」という声が聞こえた。
 前方にはすごくうれしそうな江口君が見える。
「田中さんも藤崎さんも社食なんて珍しいですね」

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