かわいい君まであと少し
 鼻息を荒くしながら、電話を切った。そしてすぐに着信拒否にした。それがちょうど一週間前のことだ。

「怜子、よくそんな男と付き合ってたわね」
 話が終わると、姉は深い溜息を吐いてからそう言った。
「自分でもそう思う。ニセ妹事件のときに完璧に別れるべきだった」
「まあ、いいじゃない。もう別れたんだし。今日、電話したのはね、私、引っ越すから」
「そっか、いい部屋見つかったんだ」
「そう、智弘さんが納得いく部屋をね」
 姉は今年の九月に結婚する。そのため、この数カ月は結婚相手の竹井さんと部屋探しに明け暮れていた。
「よかったね」
「うん。ねえ、引っ越す気ない?」
「なんで?」
 今の部屋は入社した頃から住んでいるから、もう五年になる。それなりに愛着もあるし、困っていることもない。
「いや、だってね、松本さんが部屋に押し掛けて来るかもしれないでしょ。それに松本さんって、まだ納得してないと思うよ。怜子の話を聞いていると結構怜子に執着している気がする」
 携帯を変えたからもういいと思っていた。それに、あと一年は大阪に居るからな、とも思っていた。
「そうだね。引っ越そうかな」
「なら、私が住んでいる部屋に来ない? ペットも大丈夫だから時々モネを預かってくれるとうれしいな」
「それって、完璧に自分のために聞こえるんですけど」

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