かわいい君まであと少し
「うわ、きれい」
 噴水を見た瞬間、口から在り来たりな感想が出た。でも、私はこの言葉以外で今の感情を伝えることができないと思った。
 噴水の飛沫によって小さな虹ができていた。太陽の光と水の反射できらきらと輝く虹になっている。
「志穂ちゃん、見て。あれは虹だよ」
 ベビーカーに座る志穂ちゃんの横にしゃがみ、虹を指さして言った。
「虹。きれいでしょ」
「に、じ」
「そう。虹」
 両手をばたばたと動かす志穂ちゃんを見て、望月課長はベビーカーから志穂ちゃんを下した。
 志穂ちゃんの手を取って、私は虹の近くに寄った。噴水の音に少し怯えながらも、虹に少しでも近づこうとしている。
「大丈夫よ。怖くないから。れいが志穂ちゃんの手を握ってるから」
「うん。れい、いるよ」
「そう。もう少し虹に近づいてみる?」
 こくりと頷き、小さな一歩を踏み出した。
 白い石で囲われている噴水に近づくと、志穂ちゃんは両手を広げた。そして手をグーパーグーパーと繰り返している。
 もしかして虹を掴みたいのかな。
「志穂ちゃん、虹はつかめないの」
「いや」
「あのね、虹は水と空のお友達なの。だから、離れ離れにしたらかわいそうだよね。志穂ちゃんの大事なウサギさんが居なくなったらどう思う?」
「いや、だめなの」
「そうだよね。だから虹はここに居るのが一番楽しいのよ」
「うん」

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