かわいい君まであと少し
 志穂ちゃんは虹をじっと見つめていた。
 覚えておきたいのかな?
 後ろ見ると、望月課長が数メートル離れた所からスマホを構えていた。
 写真、撮ってるんだ。
「悠太さん、一緒に虹、見ましょう」
 少し大きな声で望月課長を呼んだ。さすがに、こんな場所で“ゆたさん”と呼ぶわけにもいかず、正しい名前で呼んであげた。
 ベビーカーを押しながら、小走りでこっちにやってきた。
「怜子、今、悠太さんって言ったよな。悠太スイッチ押したよな。今のままキープして。オフにしなくていいから」
「何のことですか? あの大きな木の下にあるベンチでお昼にしましょうか。ちょうど木陰になってるし」
 一人、喜んでいる望月課長を放置し、私は志穂ちゃんと一緒にベンチへと歩いた。
「怜子、志穂、待って」
「早く。悠太さんが来ないとお弁当が食べられません」
 私たちの隣にやってきた望月課長は「置いてくなよ」と、嬉しそうな顔で言った。
 もう、言ってることと表情があってない。本当、かわいい人。
 ベンチに座り、今朝三人で頑張って作ったお弁当を広げた。
「美味そう。今朝も見たけど、外でみるともっと美味しそうに見えるのって何だろうな」
「本当に何ででしょうね。これって、食べても倍美味しく感じるから、また不思議ですよね」と言いながら、志穂ちゃんの手をおしぼりで拭いから、エプロンを着ける。
「じゃあ、食べよか」
「ですね」
「みんなで、せーの」と望月課長が言うと、「いただきます」の合唱になった。

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