かわいい君まであと少し
 安定したテーブルがないため、フォークに刺したおかずをフォークごと志穂ちゃんに渡すようにした。
「悠太さん、これどれが梅ですか?」
「さあ」
「さあって、握ったのも詰めたのも自分じゃないですか。普通、右の列が梅で左の列が昆布みたいしません?」
「そこまで考えてなかった」
「もう、いいです。昆布でも梅でも」
 望月課長が握った大きなおにぎりは、いかにも男の飯という感じがした。手掴みで頬張るには大きすぎるため、フォークで一口サイズにしながら食べた。私が取ったおにぎりは昆布だった。
「このきんぴらごぼう上手い。怜子って、本当に料理上手いよ」
「ありがとうございます。時間がなかったんで、ミートボールは冷凍食品なんですけど」
「いいよ。昨日、急に決めたことなんだし、それでここまで準備してくれたのはすごくうれしいよ」
「いえ」
 望月課長は瞬く間に大きなおにぎりを二つ食べてしまい、最後の一つに手をかけていた。
「うれしそうだな」
「まあ、二人とも私が作ったご飯、いつも美味しそうに食べてくれるから」
「怜子の手料理なら俺はいつだって食べたいよ」
 この人は、どうして普通の会話の中に、こういう言葉を混ぜるのだろう。その言葉に私はいつも胸がキュッとする。
 そんなことを知らない望月課長は、志穂ちゃんに野菜を食べさせて「美味しい?」なんて楽しそうにしている。
 二人をぼんやり眺め、あっ、と思った。
 写真撮ろう、ペアルックの二人。

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